2017年09月03日

αJunoのVCF/VCA(2)

ir3r05.jpg


前回はVCF・VCAを内蔵したカスタムチップIR3R05の紹介をしましたが、今回はIR3R05の周辺回路を見てみます。
といっても、必要な回路がほぼワンチップになっているので、あとは制御信号と音声の入出力ができれば終わりです。
αJunoは6ボイスですので、同じ回路が6個搭載されていますが、その1ボイス分が上の写真です。
写真の左上の細長い部品は抵抗アレイで、そのほかにはコンデンサや抵抗が少しあるだけです。

αJuno-2のサービスマニュアルを見ると、この部分の回路図は以下のようになっています。
aj-vcf-vca-01.png

下の囲みの部分は抵抗アレイですが、この内部の接続がややこしくて、以下のようになっています。
おそらくIR3R05用のカスタムの抵抗アレイなのでしょう。
aj-vcf-vca-02.png


このままだと見通しが悪いので、抵抗アレイの内部を展開して書き直した回路図が以下になります。
点線の枠内が抵抗アレイです。
alpha-juno-IR3R05.png


VCFのCV信号は微調整用の半固定抵抗や、温度補償用?のサーミスタが接続されています。

VCAの制御信号はLINEARとEXPONENTIALの2つがあり、前者はエンベロープ、後者は等比級数的なので音量調整に使われます。
EXP端子にはVCAのレベル信号のほか、コーラス回路からの信号がCOMPANDING CVとして入力されています。
おそらく、コーラスがオンのときに音量を下げる働きをするのではないかと思います。
posted by boochow at 20:52| Comment(0) | Synthesizer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

αJunoのVCF/VCA(1)

ir3r05b.jpg
αJunoでは、VCFとVCAは「IR3R05」という1つのカスタムチップに集約されています。
roland_filter_versionsによると、このチップはαJunoのほか、JX-8P、JX-10およびMKS-80の一部のバージョンで使用されています。

これらの直前の機種であるJuno-106やJX-3Pでは、VCFはカスタムチップではなくOTA(オペレーショナルトランスコンダクタアンプ)を用いて構成されていました。
OTA自体はIR3109というローランドのカスタムチップでしたが、JX-3Pのサービスマニュアルによると4つのOTAを1チップにした比較的単純な構成です。
以下のページで、IR3109のリバースエンジニアリングについて議論されています。

MUFF WIGGLER :: View topic - reverse engineering the IR3109

また、VCAはBA6110というカスタムチップで構成されていました。
こちらの記事によると、このチップを生産していたのはRohmだったようです。
Juno-106では、VCF・VCAを80017Aという小さなモジュールに封止していましたが、内部の回路はそれ以前のJuno-6/60と同じであることが明らかになっています。

80017A VCF/VCA Teardown | Obsoletetechnology

一方、IR3R05についての情報はローランドのサービスマニュアルに少し記載されている程度で、あまり多くありません。

以前ローランドから発売された、アナログ回路の動作をエミュレートした「Roland Boutique」シリーズでも、対象はIR3109を用いたJupiter-8、Juno-106、JX-3Pの各機種です。
IR3R05を搭載した機種は、一つもエミュレートされていません。

IR3R05がIR3109のVCFをそのままワンチップにしたものであれば解りやすかったのですが、IR3109系の音とIR3R05の音は傾向が似ているとは言え、若干違っています。

IR3109系のフィルタはレゾナンスを上げていくと自己発振しますが、IR3R05は自己発振しません。
音は、私の印象としてはIR3R05系の音は若干ダークで、パッドやベースには向いていますが、リードやベル系など煌びやかな音が欲しければ、IR3109のほうが得意なように思います。

IR3R05は今は製造されておらず、eBayなどにデッドストックが出品されているのみのようです。
IR3R05を用いたユーロラックモジュールも以前販売されていましたが、現在は販売が終了しています。
これもデッドストックのIR3R05を使っていたのかもしれません。

AMSynths AM8105 VCF & VCA - Eurorack Module on ModularGrid

というわけで、IR3R05に関する技術情報はサービスマニュアルくらいしかありませんが、各機種のサービスマニュアルを見ると微妙に記載が違っています。
図に関しては、αJuno-1のマニュアルが一番良さそうでした。
ブロック図はどの機種のマニュアルにも載っているのですが、信号波形の図に、入力信号やフィルタのCVの設定が記載されているのはαJuno-1のマニュアルだけでした。

ir3r05.png


説明文に関しては情報が正確そうだったのはJX-10(Super JX)のサービスマニュアルです。
以下のように記載されています。
VCFの部分はステートバリアブルの2ポールLPFの2段で4ポール(-24dB/oct)の特性があります。

αJuno-2のマニュアルでは、
VCFの部分は-24dB/oct(-12dB/oct×2)で減衰するBPFとLPFを組み合わせた可変フィルターです。

と記載されており、「BPFとLPFを組み合わせた可変フィルター」というのが何なのか解りませんでした。
ここは、「BPFとLPFを内蔵したステートバリアブルフィルター」ということだったようです。

ステートバリアブルフィルタはHPF、BPF、LPFの3つの出力を得られるフィルタです。
独立したLPFとHPFを組み合わせてBPFを構成しているわけではありません。

低周波 状態変数型フィルタ

シンセサイザーでは比較的定番の回路だそうで、最近ではKORGのmonologueがこのタイプのフィルタを使っています。

「monologue」では、ステート・バリアブル・フィルターの変形というか、少しチューニングした回路に替えました。使っている素子はOTAで、回路自体はアナログ・シンセでは定番のものだと思います。スペック的には、12dB/octの2ポール・フィルターですね。

ICON ≫ 製品開発ストーリー #32:コルグ monologue 〜 5色のカラバリも魅力! 3万円以下で買える100%アナログ音源のマイクロ・シンセサイザー 〜


IR3R05では、一段目のフィルタのLPF出力を二段目のフィルタの入力としているようです。
各段のBPF出力とLPF出力の波形は、C1〜C4へ出力されています。HPFは出力されていません。
二段目のLPF出力はバッファを通った後、電圧/電流変換されてVCAへ入力されますが、バッファを通った直後の信号がLOADへ出力されています。

posted by boochow at 11:41| Comment(0) | Synthesizer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月13日

αJunoのCV制御回路

analogdiscovery2.png

Analog Discoveryのロジアナ機能を使って、αJunoのCV信号を観測してみました。

αJunoでは、VCAやVCFの制御信号は時分割でDACで生成して各チップに出力しています。
Roland αJunoのDCO(3)で触れたJuno-106の制御信号と基本的には同じ回路です。

この部分の回路は下図のようになっています。
DACの出力が2つのチップ(4051とNJM7032)へ入力され、同時に5本の信号線が2つのチップを制御します。
DI0、DI1で2つのチップのどちらかを指定し、DC0〜DC2の3ビットがチップのどのピンにDACからの信号を出力するかを指定しています。

S/H部分は、VCF CVを担当するNJM7032はコンデンサとバッファを内蔵していますが、VCA CVを担当する4051のほうはバッファは使わずにコンデンサだけで済ませています。
バッファがなくて大丈夫なのかと疑問に思いましたが、信号の行き先であるIR3R05(ローランドのVCF/VCAチップ)との間に入っている抵抗アレイの抵抗値(Pin3〜Pin10間)を測定したところ、3.25MΩとかなり高い抵抗値でしたので、コンデンサがすぐ放電することはなさそうです。
aj-dac-mpx3.png


Analog Discoveryはオシロスコープとロジックアナライザを同時に1画面で動かすことができるので、上の回路図のTP3でDAC信号をオシロで観測しつつ、ロジックアナライザをDC0〜DC2に接続して出力ポートの指定の様子を見てみました。

αJunoのメンテナンスマニュアルには、下図のようにこの部分の解説も掲載されています。
4msecの間に、16種類の値を伝送しています。
図の上の2行の数値が、出力ポートの指定を表し、最下行がデータの内容を表しています。
例えば、IC12 Enableで出力ポートの指定が0なら、DACの出力は音源AのVCFのCVを表します。
aj-dac-mpx1.png

ちなみに、Juno-106では次の図のように、鋸波発生用のCVやノイズレベルなど合計24種類の値を4.2msecの間に送信していました。
αJunoではDCOの鋸波発生用のCVはDCO内で生成しているので、信号の種類は減っています。
juno106-dac-mpx.png


さて、実際にロジアナで取得した値を元に、DACの出力信号を推測したのが次の図です。
基本的にはメンテナンスマニュアルの記載と一致していますが、後半部分でIC11とIC12の順番が入れ替わっていました。

マニュアルでは、
VCF-CV-C → VCA-CV-A → VCF-CV-D(以降もVCA→VCFの順)
という順序になっていますが、実際には
VCF-CV-C → VCF-CV-D → VCA-CV-A(以降もVCF→VCAの順)
となっています。

ちなみに、静止画だとわかりませんが、CHORUS LFOの値は時間の経過に従って増えたり減ったりしています。
信号が直接観測できるのは、やはり楽しいですね。
aj-dac-mpx2.png
posted by boochow at 12:49| Comment(0) | Synthesizer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月12日

ELパネルがお亡くなりになってしまいました

bad-el.jpg

先日交換したばかりの、αJunoのLCDのバックライトですが、なんともう壊れてしまいました。

ちょうど使っているときでしたので、壊れるところを目撃したのですが、特に前触れもなく「フッ」という感じで消えてしまいました。

もしや、電源が故障したのでは?と思い、電圧を測定してみましたが問題ありません。

仕方なく取り外してみたところ、見た目には特に問題はないのですが、テスターで計ると37.5KΩで導通していました。
ELパネルがテスター程度の低電圧で抵抗値が計れるというのは変です。

ためしに、もともと使われていた古いほうのELパネルと比較してみました。
電源につなげたところ、まだ微かに発光しましたので、電源は正常でした。
テスターで測定してみたところ、抵抗値は無限大でした。

というわけで新しいELパネルの異常であることが濃厚になりました。
絶縁用のラミネートに何か問題があるのかと、電極と電極の間のラミネートにハサミを入れてみましたが、変化はありません。

あきらめて取り外したままにしておくことにしました。
2000円かけたのに1ヶ月しかもたなかったとは、残念です。
posted by boochow at 23:50| Comment(0) | Synthesizer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Roland αJunoのDCO(7)

αJunoも、他のJuno同様にノイズを音源にすることができます。
下図がαJunoのノイズの波形です。
これを見ると、Juno-106までと異なり、αJunoではノイズもデジタル方式になっているようです。
1と0がランダムに出力された波形になっています。
aj-dco-noise1.png

もう少し拡大して見てみると、パルスとパルスの最短の間隔は42.5μsecくらいでした。
つまり、23.5KHz以下の様々な周波数の矩形波を切り替えながら出力しているということになります。
aj-dco-noise2.png
デジタル回路でノイズを生成する方法としては、M系列というホワイトノイズに近い数列を生成できるLinear-feedback shift register(LFSR)という方式が有名なようです。
実際のところαJunoでどのような方式が使われているのかは分かりませんが、おそらくLFSRを使っているのだろうと思います。

ちょっと脇道にそれますが、以前スペースインベーダーのサウンド生成を調べた際も、ノイズはシフトレジスタで生成されていました。
その回路は4006という18段のシフトレジスタを使っており、下図のような構成になっています。

invader-noise.png


ちょっとわかりにくいですが、シフトレジスタをD5→Q9→D1→Q4→D10→Q13→D14→Q17という構成で接続しています。
これを書き下すと次の図のようになります。
LFSR的には、
X^17 + X^5 +1
という多項式になるようです。
invader-noise2.png

さて、このノイズも含めると、αJunoのDCOは

・矩形波(3種)
・鋸波(5種)
・1オクターブまたは2オクターブ下の矩形波(6種)
・ノイズ

の4つを足し合わせた波形を出力できます。

中でも有名なのが「Hooverサウンド」でしょう。(ビデオでは2:30あたりから)


この音の元になったのは、ファクトリープリセットにある「What the」という音色のようですが、これは
・PULSE3(PWMありのPULSE)
・SAW3(PWMありの鋸波)
・SUB6(2オクターブ下のデューティ比25%の矩形波)
・NOISE
を足し合わせています。
フィルターやエンベロープ無しの素のDCO出力の音はこんな感じです。



波形を見てみると以下のようになっています。
1DCOとはいえ、ずいぶん複雑な波形になっていますね。
なのになぜか音は不思議とあっさりしています。
これはαJunoの独特な持ち味のように思います。

aj-dco-hoover.png
posted by boochow at 01:12| Comment(0) | Synthesizer | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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