Roland αJunoのHPFについて

αJuno-2のユーザマニュアルによると、αJunoの音源のブロック図は以下のようになっています。
HPFがDCOとVCFの間に挟まっています。
これは、αJunoの1つ前の機種であるJuno-106の操作パネルのイメージそのままです。

alpha-juno-2-diagram.gif
juno-106.jpg

ですが、整備用マニュアルに載っているブロック図によると、実際の構成はちょっと違っていて、HPFはVCAとChorusの間に挟まります。

ブロック図全体は以下です。
HPFは中央右端にあります。

alpha-juno-2-diagram2.gif

図の右上のあたりを拡大すると以下のようになっています。

alpha-juno-2-diagram3.gif

図から分かるように、αJunoは6音ポリフォニックですが、HPFは1つしかありません。
効果は6音を足し合わせた後にかかります。
当然、モジュレーションをかけることができません。

図の下方から「A,B」という2本の制御信号がHPFへ入っていますが、これは2ビットの情報で、HPFの設定を4種類の中から選択することができます。

JunoシリーズのHPFで面白いのは、HPFといいつつ「低音ブースト」の機能があることです。
HPFの設定値は「0, 1, 2, 3」から選択するのですが、0を選ぶとHPFではなく低音ブーストになり、1を選ぶとバイパスになります。
切り替え式のアイソレーターみたいな感じですね。

このあたり、開発者の方の意図は以下のようなことだったそうです。

1オシレーターでいかに音に厚みを出すかというのが、JUNOシリーズ開発の一番の目標でしたね。そのためにコーラス機能を付加したり、ハイパス・フィルターがかかっていない状態だとローが持ち上がる仕様になっていたりといろいろ工夫をしています。ですからハイパス・フィルターを0から1つ上げた設定が、実はフラットなんですよ(笑)。

Roland – Roland Boutique 製品開発ストーリー #2

このHPFの実際の回路も、整備マニュアルに掲載されています。
下図のような回路です。

alpha-juno-2-hpf.gif

図では右側のオペアンプ部分にHPFとありますが、この部分は単なるアンプです。
C10、R18はローパスフィルタを構成していますが、カットオフ周波数を計算すると(f=1/(2πRC))33KHzくらいになりますので、高周波ノイズをカットする目的と思われます。

実際のHPFは、4052の左側のコンデンサが担っており、コンデンサの切り替えは4052が行っています。
4052はアナログ信号のマルチプレクサが2つ入っています。
4つの入力[X0, X1, X2, X3]の中から、[A, B]の2ビットで指定された1つだけが、XCへ出力されます。
Y0~Y3およびYCについても同様です。
セレクタ[A, B]は一組しかありませんので、X系統とY系統は同じ番号の信号が選択されます。

この4052周辺の回路を模式的に書いてみると、下図のようになります。

alpha-juno-hpf2.gif

4つの設定のそれぞれの場合の信号の流れ方は、以下のようになります。

[3]: 入力信号→コンデンサ(0.0047uF)→X3→XC→出力信号

[2]: 入力信号→コンデンサ(0.015uF)→X2→XC→出力信号

[1]: 入力信号→X1→XC→出力信号

[0]: (入力信号→X0→XC)+(入力信号→Y0→YC)-(YC→コンデンサ(0.1uF))→出力信号

コンデンサを信号が通過するときは、ある周波数以下の信号が通りにくくなる効果があります。
この周波数は、容量が小さいほど高くなります。
従って、[2]より[3]のほうが、より高い周波数の信号だけが通過できることになります。

一方、[0]の場合は、逆にコンデンサを通過できる高い周波数の信号はアースへ捨てられ、コンデンサ(0.1uF)を通過できなかった低い周波数の信号が出力信号へ加算されますので、ロー・ブーストの効果が出てくることになります。

普通なら3段階のHPFにしてしまいそうなところを、ローブースト+2段階のHPFにしたところがミソですね。
RolandのJunoシリーズはもともと普及価格帯をターゲットにした製品ですので、コストをかけられなかった中で少ないパーツで工夫して音のバリエーションを増やそうとした苦労が偲ばれます。

ちなみに、前機種のJuno-106では、HPFの回路は以下のようになっていました。

juno106-hpf.gif

コンデンサを切り替えてHPFを構成しているところは変わりませんが、マルチプレクサは1系統のみで、αJunoとは逆に入力信号がYCへ来ています。
また、高域をカットした信号がオペアンプによる低音増幅回路(たぶん)に入力されています。
これによって原信号よりもローが増幅された信号が原信号に加算されていると思われます。
αJunoでは低音増幅回路はありませんが、残り1系統のマルチプレクサをうまく使って増幅効果を出し、オペアンプ1/2個分を節約しています。

なお、以下の記事によると、Juno-106の前機種であるJuno-60では、HPF回路はローブーストが無く、3段階(C=0.022uF、0.01uF、0.0047uF)の切り替え式になっていたようです。

Sequence 15: Why does the Juno-60 sound different from the Juno-106?

ちなみにJuno-60のさらに前、Junoシリーズの1号機であるJuno-6では、HPFはスライダによる無段階設定になっています。Juno-60で音色をメモリーできるようになり、その際にHPFの設定を2bit4段階で記録することにしたのではないかと思います。

最後に、αJuno-2でのHPF周辺の基板パターンと実装イメージも載せておきます。
コンデンサは音質に直接影響するパーツですが、HPFに使われているのはフィルムコンデンサ(マイラーコンデンサ)のようです。

基板パターンまで整備マニュアルに載っているのはすごいですね。
KORGのmonotronシリーズが回路図を公開して注目を集めたことがありましたが、入手できる情報の面白さという意味ではαJuno-2のほうが上かもしれません。

alpha-juno-2-hpf3.jpg
alpha-juno-hpf4.gif

Roland αJuno-2について

ajuno2.jpg

最近、1985年頃に発売されたローランドのシンセサイザー「αJuno-2」を入手して遊んでいます。
もちろん中古ですが、この機種はアナログのポリフォニックシンセサイザーとしては安く流通しており、1万円ほどで入手できました。

古いシンセサイザーは、メーカーが作成した整備用マニュアルを始め、いろいろな情報がネット上に出回っていますので、故障さえしていなければお買い得とも言えます。
αJuno-2については、以下のサイトに膨大な情報がまとまっています。
(MKS-50はαJunoの音源モジュール版です。)

ROLAND MKS-50 SYNTH INFO

このサイトに「Alpha Juno-2 Service Notes (v.86-1)」という資料が掲載されていますが、これが整備用マニュアルです。
ありがたいことに英語、日本語の両方で記載されています。

これから時々、このマニュアルを読んでわかったことなどをメモ的に書いていきたいと思います。

Dave Smith Instruments Mopho Keyboardにノイズ対策コンデンサを付ける改造

私が持っているシンセサイザに米国Dave Smith InstrumentsのMopho Keyboardがあります。
こんなのです。

モノラルのアナログシンセで、いい音です。
私が持っているのはキーボード一体型ですが、音源モジュール版もあります。

ネットを見ていたら、たまたまこのMophoの音質を改善するという記事を見つけました。

The Mopho’s pulse wave… – Gearslutz Pro Audio Community

MUFF WIGGLER :: View topic – Got a Mopho Keyboard and want it to sound better?

改善される問題点は、波形がパルス波の場合に音質がノイジーで、特にパルス幅の設定が最大値のときにノイズがひどい、というものです。
私のMopho Keyboardでも確かに同様の現象が起きていました。
パルス幅が99のとき、かなりノイジーです。

解決策としてDACの電源ラインに10μFのコンデンサを付ける方法が紹介されています。
DACの基準電圧に電源ラインからのノイズが載っているので、その対策だそうです。
この対策でパルス波の音質自体も良くなるということなので、やってみることにしました。

コンデンサはR71に並列に取り付けます。
R71の場所はメインボードほぼ中央の下部のほう、矢印の位置です。

r71.jpg

取り付けるコンデンサは、上記の記事ではタンタルコンデンサを使っていますが、電解コンデンサでもいいそうです。

You’ll need one 10uF, 16V tantalum capacitor. You can use a decent quality electrolytic if you wish, and in that case, a 10uF, 25V will suffice.

せっかく手間をかけるので、最高級のオーディオ用電解コンデンサを使うことにしました。
最高級といっても、1個41円でしたが・・・。

nichicon-muse-kz.jpg

ニチコンの「Muse KZ」シリーズです。
秋葉原にある海神無線で買いました。
10uFのものは耐圧が100Vのものしかなかったので、やや大きめです。

これをこの位置に取り付けます。
電解コンデンサは極性がありますが、記事によると「キーボード正面側から見て左がプラス。R71の「1」に近いほうがマイナス」ということです。

r71-2.jpg

取り付けた様子です。
だいぶ大きいので、運搬などで振動を加えると取れてしまう可能性が高いです。
私の場合は、自宅で使うだけなのであまり心配していませんが。

r71-3.jpg

取り付けた後の音です。
私のMopho Keyboardはパルス幅が99でも音は出ますが、ノイズは乗らなくなりました。