JunoシリーズのDCOは、マスターオシレータの信号から鋸波を、さらに鋸波から矩形波を生成します。
鋸波と矩形波は同時に用いることができるので、1DCOながら比較的複雑な波形をつくることができます。
今回は鋸波以外の波形の生成方法を見てみます。
次の図はJuno-60のメンテナンスマニュアルに掲載されている矩形波生成の解説です。
他のシンセサイザ(山下シンセとか)でも使われている手法で、鋸波や三角波と、パルス幅を指定する電圧をコンパレータ(水色の部分)に入力して比較するというものです。
PWM制御のための信号はスライダやLFOで制御します。
Juno-6ではLFO・スライダ・エンベロープから選択するようになっていたようです。
Juno-60は音色をメモリできるようになったため、設定値をいったんA/DでCPUに取り込み、D/Aで制御信号を生成しています。
Juno-106も同様にD/AでPWMの値を生成しています。
このとき用いられるDAコンバータは、前回紹介したDCOの鋸波用CV信号を生成していたDAコンバータを時分割で共用しています。
次に、サブオシレータの信号生成を見てみます。
サブオシレータは、メインのオシレータより1オクターブ低い音を生成して、低音の厚みを増す働きがあります。
Junoシリーズのサブオシレータは矩形波のみで、鋸波はありません。
生成メカニズムも比較的単純で、Juno-6/Juno-60/Juno-106では8253で生成された矩形波をフリップフロップで1/2に分周するだけです。
以下がその部分の回路です。
Juno-106では、これまで見てきた鋸波、PWMつき矩形波、サブオシレータの3つの波形生成をカスタムチップ(MC5534A)に納めています。
ワンチップで2チャンネル分が入っていますので、1台のJuno-106に3つのMC5534Aが入っています。
これはASICではなく、専用基板上に表面実装したモジュールをプラスチックでモールドしたものです。コストダウンのためというより、小型化のためかもしれません。
海外では、互換チップも作られています。
D5534A JUNO-106 MC5534A WAVE GENERATOR IC REPLACEMENT
最後に、ノイズジェネレータを見てみます。
ノイズジェネレータはチャンネルごとにあるのではなく、共通のノイズジェネレータの信号が各チャネルにミックスされています。
次の図はJuno-60の回路図です。
図で右側からピンクのラインで入力されているのがノイズ信号です。
Juno-106でも、同様にノイズ信号はMC5534Aの出力(1つ前の図の14番ピン)とミックスされているだけです。
このノイズ信号を生成するノイズジェネレータですが、次の図の上がJuno-60、下がJuno-106のノイズジェネレータです。
見て分かるようにほぼ全く同一の回路です。
方式自体は一般的なもので、トランジスタ(2SC945)のベース・エミッタ間にに逆電圧をかけて降伏させ、発生したノイズをOTAで増幅しています。
増幅に「BA662」というチップが用いられていますが、これはローランドの製品に数多く用いられているローランドのオリジナルのチップだそうです。
これも、海外では互換品が作られています。
これで基本的な波形生成は終わりなのですが、実はαJunoには、αJunoだけの特有の波形があります。
残念ながらαJunoのDCOはチップ化されているため、内部は推測するしかありませんが、次回はαJunoのDCOについて考えてみます。
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